この町のこの人

Published:2012.03.07

お名前:田中 英義さん プロサーファー 25才
ご家族:奥様・長男1才。近所の実家に両親、姉、祖母。
一宮町人:1986年生まれ~

一宮生まれだそうですね?

はい、生まれも育ちも一宮町です。サーフィンをはじめたのが9才(小学3年生)の時。父親の影響ですね。父親もずっと地元で、サーフィン好きで、サーファー向けの不動産の斡旋などを行う会社を経営しています。事務所が海の前でしたから、小さい頃、よく若いお兄さん達が遊びに来ていて遊んでもらっているうちに自然にサーフィンをするようになっていました。
プロ合格年は2001年、14才の時です。当時はこの年でプロに合格する人はいませんでした。今は13才で合格した人もいますが。
小学校は地元の一宮小で、1学年上に双子でサーフィンしている人がいて、一人はプロになりました。それと同じく1学年上の方で、引っ越して来てプロをやっている人もいます。

 

地元のサーファーは多いのですか?

地元ローカルのサーファーって実はあまりいないのですよ。まず、プロはあまりいなくて、アマチュアもあまりいないですね。いっぱいいるように見えますが、ほとんどは他所から来た人達、移住者ですね。一宮海岸のポイントにはローカルもちょこちょこいますが、志田下辺りはローカルはほとんどいないみたい。こちらに住んでいるプロサーファー達もほとんどが移住者です。まあローカル優先というのはどこでもそうでしょうけど、区別みたいなものはあまりないですよ。

僕はローカルだし、技術も普通の人よりはあるから、サーファーが増えてもそんなに問題ないです。ただ、人が少ない方が楽しいじゃないですか。人が多いと、自分がいい波乗っても、手前に他の人がいたりすると避けたりしなくてはいけないでしょ。でも、みんなサーフィンが好きで来てるわけですから。立場的にもどんどんサーファーが増えて盛り上がることを喜ばなければいけないのですが。

 

プロサーファーってどんな生活?

毎日海に入る時もありますし、休む時もあります。気分によりますね。入る時は1日に1回か2回、時間は決まっていないですね。
その他の時間は、なんやかやとやることがあるからやっている。海外への遠征や雑誌の取材など、意外に忙しいのですよ。でも、サーフィンだけで食べているのは、極少数ですね。僕の憶測だと上から16番位までじゃないですか。
主にスポンサー契約でみんなご飯を食べてるのですよ。それがないと他に仕事もしないと難しいでしょうね。大会は年に6回しかないし、優勝しても賞金は70万円ちょっとですから。まあ、大会だけじゃないですけどね。例えば、スクールをやったり、イベントに出たりしても仕事になりますから。

 

一宮の波は世界的に見てどうですか?

2005年に釣ケ崎・志田下でワールドツアーというトップの44人しか出られない世界大会のツアーがあって、1回戦はそこでやったのですが、参加者はいい波だと言っていたそうです。ビーチでのサーフィンでは、波の形もいいし乗りやすくてきれいな波だと思います。世界と比べちゃうと力はちょっとないかなと思うけど。
一年を通して平均的に波があるということで一宮が選ばれるみたいですよ。宮崎などもいいらしいですが、仕事のこともあるでしょうから東京に近いというのも強みなのでしょう。こちらの方がたくさんプロサーファーも住んでますからね。

 

国内の大会には出ず、海外で転戦している人もいますね。ハワイに住んで活動している人もいます。海外は僕も狙ってます。今年から入れたらなと思ってますが。海外の大会はそれぞれグレードがあって、参加するにはランキングとの兼ね合いになります。一番高いグレードは、たとえ日本人のトップだとしても世界で70位くらいですから、その位の人がたまに出られるくらいじゃないですか。日本人のランキングは昔から低くて大きな差があります。海外は進んでいるし、サーフィン自体も盛り上がっていますから。日本はどうでしょうね。昔は優勝賞金が200万円位あった時もあるそうですが、景気とか人気によって変わるみたいですね。そういえば、僕が小学生くらいの時は、「陸サーファー」がいましたよ。サーファーの格好をしてモテたいって。

 

ただビーチでの波は底の地形にもよるから、砂の地形はどんどん変わってゆくし、いつも同じではない。だから、ここ最近波の様子が変わってきたみたいですね。浜欠け防止のためのテトラポットが入れられたりして、海流が変わって海底の砂の地形も変わってきているとか。
サーファーとしては困るけど、一般の人にとっては温暖化で海面も上昇し、浜欠けも進行してきているしで、やらざるをえないのでしょう。でも、テトラの設置やヘッドランドなどの建設に当たっては、サーファーや地元の人の意見も聞いて欲しいです。それに、建設してみた結果こうだったからこれは止めて元に戻そうとか、そういう姿勢も必要なのでは。相手は自然ですからね。

 

最近のサーファーのマナーなどは?

ローカル・ルールを分かってない人が多いですよね。特に初心者の人は。昔ならほとんどの人が各サーフショップに所属して、技術的なことだけじゃなく、いろいろルールを教えてもらったりしてやっていたのでしょうが、今はボードもネットで買えるし。上手い人ほどすごい奧(沖)から来ちゃうから、初心者の人からすればまさかここまで乗ってくるとは思わないで乗っちゃうこともある。悪気はないと思うのですが。たまに接触することもありますよ。ショップとつながっていると何かトラブルになった時とかも助けてもらえるかもしれないでしょ。上手な人はいいですが、ショップに所属しなくても、最初は誰かに教わった方がいいと思いますよ。

 

でも、サーフィン好きで移住してくる人で悪い人っていなさそうじゃないですか。例えば、海岸でのビーチクリーンなど頻繁にしてるでしょ。それでゴミを捨てたりしたら問題ですよ。タバコの吸い殻ひとつ捨てようものなら、ちゃんと注意する人もいますからね。かなりゴミも減ってきた感じがしますよ。一昔前はゴミがすごかったけど今はそんなことない。今は「サーファー=ゴミを捨てない人」っていうイメージになっています。「自分達が遊ばせてもらっている場所である海や浜にゴミを捨てない」考えてみたら当たり前のことです。

僕もビーチクリーンには去年も2~3回参加しました。普段も海から上がると2~3個ゴミを拾うように心掛けてはいます。

 

一宮町の魅力は?

お祭りにも参加してますよ。神輿も担いでるし。去年、総合格闘技ドリームの高谷裕之って選手が祭りに参加してて、ブログを後で見たら「死ぬほどきつかったけど、来年も担ぎたい」って書いてありました。誰かの知り合いなのでしょうけど、ああいうビッグネームが参加してくれるのはうれしいですね。

一宮で生まれ育ってるから、特に客観視したこともないけど、同級生を見てると「やっぱ一宮がいい」って、戻ってくる人も多いですよ。フェイスブックを見てると地元に帰りたいって言っている人が結構いますから。
都会に比べればノイズも少ないし。ここで生まれて、ここで死にたいですね。どこかに引っ越したとしても最終的には戻ってきたいですね。

 

移住者との交流は?

サーフィンをやってる人はいっぱいいますけど、サーフィンの世界は狭いからすぐ知り合うし、引っ越して来ている人達でもサーファーであれば結構知ってると思いますよ。交流ってほどではないにしても挨拶はするし。

 

田中 英義(たなか・ひでよし)1986年生まれ。B型。一宮生まれ、一宮育ちのプロ・サーファー。9才からサーフィンをはじめ、2001年14才でプロテストに合格、最年少記録となる。2006年にAPSA(日本プロサーフィン連盟)の年間グランドチャンピオンに。Billabongやムラサキスポーツなど多くのスポンサーと契約。2011年再びAPSAのグランドチャンピオンに返り咲いた。海外への遠征や取材などで多忙な毎日を送っている。